つげ義春旅写真

塩釜_2(1975年)

 六年後の再訪もやはり東北へ行ったついでに、仙台から石巻へ向かう仙石線を利用し、本塩釜駅に下車すると、以前とは駅前の様子が違っていた。最初の東北本線の塩釜駅と混同していたようなので、本塩釜駅は偶然だった。だが駅を出て目の前の家並を眺めると、雑然として生活がむき出しといった趣きなので嬉しくなった。
 近頃はいずこも区画整理とか称して人工的な町造りを始めるが、生活から浮いた見た目だけの厚化粧で飾った町はリアリティを失う。整理ついでに人の心まで生活から根こぎにされ管理化されるようで息苦しくなる。無秩序な景観こそ自由で解放感があるのではないだろうか。
 この二度目のときは、仙台から少し南下した名取市の海辺の「貞山堀」を見る予定があった。なのに逆方向の本塩釜にわざわざ行ったのはやはり意味不明だった。
 「貞山堀」とは、仙台藩が仙台米を水上輸送するために掘った長大な運河で、民俗学系の本に紹介されていた。水郷や運河の風景が好きなので、風景を眺めるだけの目的で訪ねてみたのだったが、東京の深川や錦糸町辺りの運河のようにやるせない暗さはなく、写真を撮るほどの所ではなかった。運河に通じる名取川に沿う町、閖上(ゆりあげ)の舟溜りは寂れてよかったけれど、その水路も運河の一部だったのか、人に尋ねてみることもなかった。(2009/6/1 記)

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