渋谷迷宮

憲兵隊渋谷分隊

イメージ渋谷シネタワー 道玄坂を少しばかり上った左手に渋谷シネタワーのビルがある。ビルには映画館が4館もおさまっているが、以前は同所に渋谷東宝映画劇場があった。地下には地下劇場がありこちらは洋画専門だった。戦後は、下の交差点から渋谷東宝の前あたりまで毎日のようにずらりと数十軒もの夜店が出ていたが、戦前は、その映画館のところに憲兵隊渋谷分隊があったという。
 この近くに住んでいた藤田佳世の『渋谷道玄坂』という著書には、「憲兵隊があったころは、堅固な建物を高い石垣で囲んで、表情の固い兵隊さんがたまに出入りしているだけだった。関東大震災の時、甘粕大尉が大杉栄を虐殺したのはこの憲兵隊であると、当時の噂に立ち、憲兵隊裏の井戸は恐ろしいものの一つになっていた。」と記されたが、これは事実ではない。
イメージ大杉虐殺を伝える新聞 大杉栄と伊藤野枝、甥の橘宗一は、新宿柏木の自宅付近から憲兵に連行され、9月16日、憲兵隊麹町分隊において、渋谷分隊長・甘粕正彦の指示によって絞殺され、そこの古井戸に投げ込まれたのである。軍法会議の結果、甘粕は懲役10年、殺害に関与した部下3名は無罪の判決だった。「国賊大杉を処断した甘粕に減刑を!」の署名数十万の「効果」ゆえだったろうか。
イメージ「純喫茶」のあった路地
イメージシネタワー裏の路地
  渋谷東宝シネタワーの裏手は、十年前まで「戦後」の名残りが強く漂っていた。明治期、この付近は花街で大いに賑わったとされ、その歓楽街の面影は現在にも通じている。数年前まで細い路地の突き当たりには二階建ての「純喫茶」があり、新聞を読んだり読書したりする会社帰りの中年男性の息抜きの場所となっていた。だが、ここにきて渋谷は「若者の街」と化し、それは路地裏にまで及んだ。見知らぬ間に「純喫茶」は跡形もなく消えた。




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