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「高松次郎―思考の宇宙」展

 「戦後美術界に大きな影響を与えた高松次郎(1938−1998)は、一人の作家のものとはおもえないほど、さまざまな形の作品を作り出しました。彼の作品は、ある仕掛けによって見る者を不思議な世界に誘い込むのが多いですが、その奥には、人間や物が存在することへの根本的な問いかけがあります。」(パンフレットより)
 展覧会場には、60年代はじめのハイレッドセンター時代の作品から、世界の注目を集めた代表作「影」シリーズ、遠近法を巧みに使った手品仕掛けのような作品、そして、晩年のシルクスクリーンによる「クニ生み」「アンドロメダ」の連作と、40年にわたる創作活動の数々が展示されていた。
 60年代半ばに「影」シリーズが登場したときの驚きは今も鮮やかに記憶されるが、60年代末の「単体」や70年代はじめの「平面上の空間」の作品群にはじめて接して、前衛芸術以前の、資質的にもきわめて都会的なリリシズムにつながる美意識と認識を感じた。『不在への問い』や『世界拡大計画』という著書には、高松の思考のすべてが展開されているが、それは美術論、表現論というより存在論的哲学である。そして、そこにも醒めた都会性が多く感じられるようだ。
 会場にハイレッドセンターの「首都圏清掃整理促進運動」の写真が掲げられていた。そこには、昨年、他界した川仁宏が写っていた。図録解説のどこにも川仁の名は見えないが、ひょっとして、ハイレッドの本来の仕掛け人は川仁ではないのか、と思った。60年代初頭の「美術と思想をめぐる」評論誌『形象』は、川仁が編集しており、毎号ハイレッドの特集を組んでいた。ハイレッドの「過激な」前衛行為は、川仁の存在があったからかもしれない。
(写真「ヴィーナスを見る女の影」1965年−「高松次郎−思考の宇宙」展図録より)
6月26日〜8月15日 詳しくは府中市美術館のサイトを御覧下さい。(7/15)

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滝田ゆう「寺島町奇譚」の世界

 浅草の吾妻橋を渡って直ぐのところにある墨田区役所の1Fギャラリーで開かれている「小山田徹・しあわせのしわよせ」展(7月4日まで)をみた。サブタイトルに「滝田ゆうの視線とのコラボレーション」とあったが、想像が及ばなかった。
 会場中央には、黒い板塀が張り巡らしてあり、板塀には、あちこちに節穴が空いていて、覗くと滝田ゆうのマンガ「寺島町奇譚」の原稿の一頁が目の前にあった。つまりは、作品の「再現」体験である。「寺島町奇譚」のなかで、主人公のキヨシ少年は、赤線・玉の井を囲んでいた板塀からしばしばなかの様子を覗こうとしていたのだが、いま、わたしたちは、キヨシに替わって板塀からそうしたキヨシの様子を覗いているということになる。
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  キヨシが悪がきたちと玉の井の路地伝いに「活躍」していたのは、1940年代であると思われるが、いまも当地には戦後に復興した赤線の面影が少しだけ残っている。日大芸術学部出身という、60年代生まれの小山田にとっては、滝田が過ごした「昭和」という時代が、大きな関心の対象となったのだろう。
 節穴のなかの原稿はもちろん複製だが、年数を経てわずかに黄ばんだ本物の原稿の数々は、隣りの展示場に飾ってある。滝田ゆうが『ガロ』誌上で「寺島町奇譚」の連載を手がけたのは、1968年からである。作品のなかの電柱には「石子医院」が出てきたりするが、「柘植産婦人科」があったかどうか・・・。いうまでもなく、このシリーズは、つげマンガを基点としていた。会場にも、つげ作品に影響されたと思われる見開きの玉の井の夜景が展示されていた。 

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