山水巡礼

小淵沢の民家

イメージ小淵沢の民家 八ヶ岳山麓である中央線小淵沢駅周辺の農村には、かつて多くの茅葺き民家が認められた。亘理俊次著 「芝棟」には、八ヶ岳山麓は、全国でも有数の芝棟密集地であったとあり、1960年代にあっても500棟を数え、小淵沢周辺だけで450棟あったと報告されている。しかし、70年代には、すでにその十分の一に減少していたようにみえた。
イメージイワヒバ屋根 茅葺き民家の屋根のてっぺんで紫の花を誇っているアヤメやショウブを見たことがあるだろうか。そうした光景は、屋根の手入れが行き届かなくて、それらや雑草が勝手に繁茂した結果ではない。風雪から屋根を守るため、棟を固める必要があった。そして、根を張る強い植物を屋根に植え付けたのである。一番多く見られるのがイチハツやイワヒバだが、農民たちはアヤメやショウブを植えて季節の情緒をも楽しんだ。
イメージ収穫まじかの村落 小淵沢で見られたのも、そのほとんどがイワヒバ棟であったようだが、それも現在では数えるほどである。
 小淵沢駅から湧水あふれる大滝神社を経て、富士山を真正面に見すえながら水田地帯を進むうち、いくつかの茅葺き民家に出会うだろう。小さな集落の辻では必ず道祖神や石祠にも出会うだろう。村びとが悪霊除けと通行の安全を祈願して建てたにちがいない。
イメージ 石祠と石棒  ときたま、石祠の隣りに20センチほどのただの丸石が置かれていることがある。じつは、これも道祖神なのだ。丸石道祖神の起源は明らかではないが、甲州独特のものらしく、小淵沢の西隣り信濃境に入るとすっかり姿を消す。小淵沢から信濃境にかけて、湧水にめぐまれた、のんびりした農村風景が展開する。
イメージめずらしい石板屋根 そして、縄文時代にこのあたりでダイナミックな「縄文文化」が花開いた事実を納得させられる。しかし、冬期の厳しさは想像を越える。戦後産まれの農民たちが茅葺きを捨て、洋風のカラフルで豪華な住まいを求めるのも理解できなくはない。
(2004/12/14)

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