山水巡礼

上岡の絵馬市

イメージ奉納幕 馬頭観世音菩薩の信仰は、7世紀頃に中国から伝わってきたといわれるが、鎌倉時代になってから、信仰はさらに盛んになったようだ。源平の乱以後、馬が戦闘に欠かせなくなったからである。そして、江戸期にはいると、馬は農業や運搬に重用され、馬頭観音信仰は、庶民のあいだに広まった。村の辻に、街道の路傍に、多くの石像馬頭観音像が並んでいった。いわば、馬頭観音は、農民たちにとっての守護神であった。そして、石像だけでなく、絵馬が、神社や寺に奉納された。
イメージ妙安寺の絵馬市  埼玉県東松山市の上岡にある妙安寺の絵馬市は、いまも毎年2月19日に開かれる。昭和初期までは、絵馬市がどの農村地帯でもみられたが、関東でも残っているのは「上岡観音」ぐらいだろうか。
  絵馬市の当日、本堂の横では手書きの絵馬が売られ、周りの境内には、農機具や刃物の店、そのほかたこ焼きやクレープの店などがところ狭しと並ぶ。学校帰りの子どもたちや農家の人たちで大賑わいだが、境内から少し離れた裏道には、ダンプが何台も列をつくっている。ダンプの運転手にとっても安全祈願は大切である。つまり、かつての運送手段の主役であった馬が、ダンプに交替したということだ。奉納台には、ダンプのミニカーまでが献じてある。そして、観音堂の手前の囲いの中には神馬としての白馬が鎮座し、子どもたちが手にするにんじんを食べている。この祭りのために上州からわざわざ運ばれてきたのだそうだ。
イメージ絵馬堂の絵馬  見落としてならないのは、絵馬堂の数々の絵馬である。日清戦争時代の馬上の将校を描いたものから、江戸時代の道中絵馬などがぎっしりだ。じつにしっかり描かれた絵馬が多く、貴重な庶民の文化財といってもいい。しかし、市の観光課や教育委員会に問い合わせても、「はあ? それどこのことですか?」と聞き返されるのがオチであるから要注意である。(2005/4/10)

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